実家の周辺では,柿の実が生った柿の木を今もよく見かける。
先日もたわわに実が生った柿の木の前を通りかかり,母と「欲しいけど勝手に持って帰るわけにいかないしねぇ」と言いながら通り過ぎようとしたところ,その家の奥さん(昔からの知り合い)が丁度帰宅したところだったので声をかけた。
彼女は「誰も取る人もおらんけんいくらでも持ってって」と言ってくれたが,何しろ柿の木は高木で実まで手が届くはずもない。
「もったいないけど食べられるのは鳥だけだよねぇ」と言いながら名残惜しくその場を去ったのだった。
その昔,50年以上も前のこと。
我が家の裏口の前には大きな甘柿の木が生えていて,毎年沢山の実を付けていたものだった。柿の木と過ごす四季は楽しかった。
初夏の頃,柿には小さな白い花が咲く。
見るからに柿の花だ。何故なら,柿の実についている萼の部分がそのまま花を支えているのが,見た瞬間に理解できる形をしているから。
高木の花なのに小さな花が目に付くのは,この花は落ちやすく,よく木の下に散らばっているためだ。柿の花を集めて某かと遊びに使ったものだった。
夏になると生い茂った柿の木の下は良い木陰になるし,蝉や野鳥もしばしば訪れる。秋になると柿の葉の紅葉が美しい。柿の葉は大きいから紅葉も映えるのだ。
晩秋に紅葉が終わる頃,柿の実の食べ頃が訪れる。実が色づくと,鵯や烏がやってきて突いていく。
柿の実をもぐのは家族の一大イベントでもあった。
脚立を準備しても,とても実まで手が届かない。竹山から細めの竹を切ってきて,竹の先を割って柿のへたを挟めるような具合に調整。脚立の上からその竹竿を使って柿をもぎ取るのだ。竹竿は意外と重いしなかなかの技術が要る。
もぎ取った柿は地面に落ちては傷むので,下で誰かが受け取る。
わいわい言いながらみんなでそうやって柿の収穫をした。
家で収穫した柿の実は,食べる時には気をつけなければならない。種のあたりによく虫が住みついているのだ。虫食い部分を排除しながら沢山食べたものだった。
渋柿の木もあった。
こちらは甘柿と違って背が低く,脚立ひとつあれば簡単に収穫できた。渋柿は本当に渋いのでそのままでは食べられない。皮を剥いて干し柿を作り,年を越してから食べるのだった。すぐに食べられないので,食いしん坊の子どもにとってはもどかしかった。
背の低い渋柿の木は,お正月に雪が積もると風情があって美しかった。
それらの木々はとっくになくなってしまったが,こうして時々思い出す。
子どもの頃は考えもしなかったけれど,木も私たちと一緒に生きて時を刻んでいたのだと,今思う。
Microsoft Bing Image Creatorに「柿が生った柿の木」をお願いしたらこんな絵になった。残念ながらサイズ感がかなりおかしい。でも描いてもらえるだけありがたいかな。
「柿の花」もお願いしてみたが,本物の柿の花とは似ても似つかない毒々しい柿色の花が提示されてしまった。英語でお願いしてみても変わらなかった。今は未だデータがそろっていないのだろうということで,AI生成画像の未来に期待しておこう。

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